めっちゃ高い自転車で京都市内をうろうろしたいなあ

2005年09月14日

009(6)

ただならぬ気配…。
殺気とはまた違う、異様な影を地に落とし、555は004と対峙した。

ちっ…やりにくい

004は軽く舌打ちし、素早く右手を上げ、全ての指からレーザーを放った。
広がる5本の灼熱の光線が555に襲いかかる。
だが、素早く3本を躱し、2本は胸部の銀のプロテクターが受け止め光の塵がきらめく。
瞬く間に555はベルトバックル部に収まった555フォンを抜き取り、銃の形に変形させて狙いを定める。
004は地に伏せて連射されるエネルギー光弾を避け、回転して空爆によって破壊された建物の影に身を隠した。

…あの気配は…人造人間か?

魂の脈動が感じられない。まるで亡者と闘っているようだ。

555は銃…ブラスターモードからφを型どったピンを抜き取り左手に装着された赤と黒に色分けされた腕時計に差し込んだ。
「EXCEED CHARGE…」
機械の音声が告げると同時に腕時計のスタートボタンを押す。
紅く流れるフォトンブラッドが銀色に輝き、555のプロテクターは胸から肩にかけて跳ね上げられ、隠されていた胸部構造…紅く輝くコアが見える。
10の数字を浮かべた腕時計…555アクセルが「START UP」と告げた時、555は音速の時の流れにその姿を消していた。

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2005年09月13日

009(5)

「…3人纏めてかかってこいよ」
ハインリッヒは腕を組み、右手を顎にやってジリジリと間合いを詰めるサイボーグ小隊に言った。
「…出来そこないの試作ナンバーめ」
それが右から迫るサイボーグの最後の言葉となった。
レーザービームに眉間を撃ちぬかれ、何が起こったか理解出来ぬまま倒れこむ。
004の右手人指し指のレーザー射出レンズは次の獲物を狙い定めようと揺れ動いた。
弾かれたように二人は走り出し同時に004に迫る。
しかし、004は正面の敵が口を開け、放った破壊音波を避けて身体を沈め、下から一気に左手に仕込まれたレーザーメスで頚動脈を斯き切った。
吹き出た夥鮮血が左の敵の視界を完全に塞ぎ、一瞬たじろがせる。
「お前達が殺った奴等とおなじ所へ行くんだ」
先ほどジローに絡んでいた男は仲間の血にまみれ、ぞくりと震えた。
恐怖に駆られつつ数万ボルトを帯電させた拳を放った。
鈍い手ごたえは痙攣しながら血の雨を降らせ続ける哀れなサイボーグのものであった。
バッと雷が走り抜け、吹き出す血すら凝固して燃え上がる。
004は既に男の背後に回り、不気味に言い放った。
「安心しろ…俺もいつかそこに行く」
胸を貫く5本のレーザーと横一文字に凪ぎ払われた閃光。
自分の身体を滑り落ち、大きく迫ってくる爪先を見つめ、男の意識は途絶えた。
ため息を吐いた後、ハインリッヒは新たな敵の気配を感じた。
黒い身体と銀のプロテクター、深紅の力強い線が四肢に伸び、頭部はφの仮面に見える。

…555は蜃気楼の様に静かにしかし、確実に004に迫っていた。

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2005年09月12日

009(4)

黒煙をすり抜け二人のサイボーグが黄色いマフラーを靡かせて飛んでいた。
002ことジェットの両足に装備された超小型推進炉が焔を吐く。
「もうすぐだぜ、004」
ジェットに抱き抱えられた004、ハインリッヒがうんざりした顔で答えた。
「早く…降ろしてくれ」
「俺だって今すぐ放り投げてやりたいぜ…そうら奴等が見えてきた」
高度を下げると凄惨な戦場がくっきりとその形を成した。
「ひどい有り様だな」
「ああ、手加減せずに済みそうだ」
ハインリッヒはニタリと笑い、両手の黒い手袋を外した。
鋼のその手は「死神」の渾名に相応しい鈍く不気味な輝きを放っていた。
「じゃあ、後でな」
「ああ、援護頼む」
30メートルの低空からハインリッヒの身体を離し、ジェットはそのまま飛び去っていく。
跪くように左ひざを大地につけ、着地した全身内蔵武器の004の身体を慣性が引きずり、舗装された路面は削られて砂煙を舞い上がらせた。
ようやくその呪縛から解き放たれて、立てた右膝がバクンと開き、人工太腿骨空洞部に連装されたマイクロミサイルが軽く乾いた音を立て、宙に舞った。

ジローは身動ぎもせず放たれた光を見つめていた。
すぐに戦車の左舷に着弾したミサイルは重ハニカム構造の鉄鋼を貫き、内部に散弾を撒き散らした。
砲台に強烈な振動が達しようやくジローは地に降りたって歩き始めた。
背後で爆音が響いたが振り向きもせず、歩き続ける。
あのサイボーグの男はもう姿を消していた。
「大丈夫か?ジロー」
燃え盛る戦車の陰から若い男が現れ、ジローは足を止めた。
「ええ…あなたも」
ジローは振り返った。
その刹那、手にした携帯電話を腰に巻かれた巨大なベルトに差し込み、日本人と思われるその若者の身体は紅い輝きを纏った。
その光は今まで流された…そしてこれから流される血の色の輝きだとジローは思った。

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009(3)

累々と並ぶ亡骸を前に、モニターしている顧客を楽しませる間もなかったな…と男は思った。
サイボーグの売り込みはうまくいくだろう。
世界最高峰の特殊部隊を数分で壊滅させたのだから。
ブラックゴーストに改造されたこの体は無敵だった。
しかし、あの切り裂かれるような戦場の緊迫感は味わえない。
キャタピラの代わりに熱核ホバーが装着された高機動戦車の砲台に座るホムンクルスに向かって男は言った。
「退屈だからお前をぶっこわしてやろうか?」
ホムンクルス…ジローは男を見つめ無機質に答えた。
「君の力では僕を壊せない。僕は人間を殺せない…」
ジローは天空を目指す何本もの黒い煙に視線を戻した。
…あの中にどれだけの失われた魂があるのだろう…。
「…試してみるか?」
怒りのあまり男の声音は震えていた。
「戦車のコンピュータートラブルを解決したのは僕だ。それに…」
黒い煙の先端がキラリと光った。
「4時の方向。サイボーグが2体」
男は振り返りその方角の空を見つめたが
「見えないぞ…」
「あと27秒で答えが解る。」
そして、命の尊さを魂に焼きつけるがいい…。
ジローは思った。
僕の良心回路は不完全だった…。では人間の良心は…。
新たな黒煙が焔を内包してあがり、彼は祈るように人工の目蓋を閉じた。

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2005年09月11日

009(2)

恐れ、怒り、苦しみ…血と涙。戦争が刻んだ人々の彫像がたたずむ世界。
飛び交う弾丸は空気を螺子きりながらゆっくりと流れ、彫像に食い込んでいく。
この、時の流れが淀んだ瞑府にただ一人、黄色いマフラーを締めた金髪の青年だけが歩いていた。
「ジョー…」
音のない世界にテレパスが意識に飛び込んでくる。
サイボーグ試作コード009、島村ジョーは破壊された建物の影に隠れ、奥歯に仕込まれた加速装置のスイッチを噛みしめ、音速の3倍の世界から帰還した。
途端にドッと阿鼻叫喚の地獄絵図が回りだす。
彫像はたちまち生きた人間となり、弾丸に貫かれ、血の海に沈んでいく。
「フランソワーズ聞こえるか?」
「ええ、エリア223で国籍不明の部隊が展開を始めたわ…サイボーグが3人とホムンクルスが一機、高機動戦車一台」
ブラックゴースト…。
武器売買で儲けるために新兵器を造りつづける死の商人達のギルド。
やつらの目的はやはり…。
「ジェットとハインリッヒが向かっているわ」
「ありがとう、フランソワーズ。僕も直ぐに行く」
「気をつけて…ジョー」
スパイ衛星並みの精度の目を持つ003、フランソワーズ。
この戦争の光景も辛く映っているに違いない。
「ああ…君も。僕は宝石に興味はないんだけどね」
「フフッ、私のかわりに見てきて。ジョー。」
奥歯を噛みしめ加速装置を起動させる。
エリクシール、エイジャの赤石、賢者の石…。
深紅に輝く石を想像しながらジョーは再び淀んだ時を切り裂くように駆けていった。

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2005年09月07日

C.009(1)

神に祝福された街のいたるところで火柱があがる。
かつて文明が最も進み、栄えた地で日夜繰り返される蛮行の数々。
灼熱に曝された砂塵が舞い…路上に放置された骸に降り積もる。
星条旗を掲げた軍隊はこの地を蹂躙し、いったいどのような未来を約束するつもりなのだろう…。
爆風に揺れる家屋の中でカタカタと震えるM16の焼けた銃口は、黒いサリーを纏った初老の女性と数人の子供達に向けられていた。
近代的な市街戦用の装備は暑さと恐怖で流れる汗でべっとりと隊とはぐれた兵士に張りつき、その目はもやは尋常ではなかった。
「もう一度聞く!…英語がわかるか?」
灼熱のさなか、薄氷の上に乗る命の重みに耐えかねて、銃口を向ける兵士の声はうわずり、向けられた女子供は蹲って震え…双方…泣いていた。
だがついに堰は切られてしまった。
激しい爆風が大地を揺さぶった瞬間。
「カチリ」
反射的に絞ってしまった引き金が軽く乾いた音で鳴いた。
タンッ…
兵士は思わず目を閉じ、顔を背けた。
罪悪感が心臓を破裂しそうなほど脈打たせた。
汗と涙に濡れ、汚れた目蓋を開ける音すら聞こえそうな白い静寂。
そして視界に飛び込む赤い色。それはやがて黄色いマフラーへと続き、豊かで美しい金髪の間から黒い瞳が兵士を見つめていた。
「はわわっ」
兵士は怯え、後ずさった。
音速で立ちふさがった金髪の青年はゆっくりと言った。
「…この2区画先に貴方の部隊が。2時の方向…」

ジャリッ…

赤い服に食い込んだ銃弾が落ちる音を聞いた瞬間、
兵士は脱兎のごとくその場を飛び出していった。
青年は女性と子供たちに微笑み、黄色いマフラーを靡かせた後、音もなく消えた。
一瞬の白昼夢の後、残された彼女達は神に祈り感謝した。
だが、超人的な能力にも関わらず青年を神の使いとは思わなかった。
なぜなら彼の瞳に宿る感情は哀切に満ちた、あまりに人間的なものだったからである。
…神よ…彼をお守りください…。
満天の星空の輝きを持つ黒い瞳を思い起こしながら、神の加護とは最も遠いところにいる彼の為にもう一度、深く、静かに祈った。
サイボーグ009 Vol.1




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2005年09月03日

555+ (18)

結花の用意してくれた朝食は半熟の目玉焼きと厚切りのトースト、そして…濃く熱い、啓太郎好みのキリマンジャロだった。
巧は必死の思いでその黒く輝く、熱く煮えたぎるコーヒーを30分以上かけ、ようやく飲み干した。

すべての洗濯物を白く綺麗に洗いあげること。
それが啓太郎の夢だという。
洗剤のTVCMで、緑の芝生に映える白いシーツ、シャツが爽風にはためいているのはそれらが平和と豊かさの象徴だからだと思っている。
同じ目だ…。
夢を語る啓太郎を見て巧は思った。
美容師になる夢を語る真理の目と。
俺には夢がない。だが、夢を守ることは出来る。
真理…、俺はお前の夢を守りたいんだ。

「もう行くの?」
「ああ」
巧はワークブーツに足をねじ込み、ぶっきらぼうに答えた。
スマートブレイン…。それがこの悪夢のすべての始まりだ。
「また、いつでも遊びに来てくださいね」
結花が啓太郎に寄り添い言った。
「ああ…啓太郎、結花さん」
「…なに?」
「…ありがとな」
巧は重い足どりではあるが、しっかりと地を踏み締め、スマートブレインと対峙すべく、一歩を踏み出した。
この漲る勇気は…啓太郎の魂の洗濯のおかげだろうと巧は思った。

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2005年08月31日

555+ (17)

テーブルには温かい食事が並び、急な来客にも関わらず、精一杯もてなそうという気持ちが感じられた。

お世辞にも新しく綺麗な家とは言えない。

クリーニング店は美しく改装されてはいるが築30年以上の古い木造の居住域は歪んで軋み、床は歩く度に不気味な悲鳴をあげ、それがいつ断末魔のそれに変わるか時間の問題に思えた。
だが、きちんと整理整頓され、掃除の行き届いた家人の人柄が色濃く伝わる住まいであった。
「…というわけでアレがいい踏ん切りになりましたよ!あははっ!サラリーマンってストレス溜まるんでしょうね〜あんな幻覚みるんだからっ!親が休業したクリーニング屋でネ!また頑張ろう〜ッてネ!乾さん…う〜ん…あっ!名前は巧?じゃあ…タッくん!タッくんが通報してくれ
なきゃ…ほら!今日みたいにコケて!酔ってたから…アレ!最悪死んじゃってたかも!」
…よく喋る奴だ。
そこへ美しい妻が新しい料理を運んできた。
チゲ鍋らしい。
鍋の向こうが熱気で蜃気楼の様に揺らめいている。
巧は途方にくれた。…猫舌なのである。
「啓太郎さん。私を置いて逝くなんて、そんな事言っちゃ駄目…」
「ごめ〜ん。ごめんね。結花ちん」
菊池啓太郎に結花。
この二人の熱さの前ではチゲ鍋など冷麺に思える。
…なぜ俺はこんなところにいるのだろう?
「あっ!今日は泊まっていってくださいね」
結花が微笑んだ。
「いや…俺は」「泊まっていってよ。部屋は余ってるし。それにタッくんは」
その呼び方はやめろと言いかけたが、
「…命の恩人だし…」

巧は赤い唐辛子の粉にまみれた豆腐を掬い、息を散々吹きかけた後、口へ運んだ。
熱さと辛さが舌を滑り、思わず目をしばたかせる。
フッと家族と最後に団欒したあの日の光景が目蓋に蘇った。
…飛行機事故の前の優しく輝く月の夜。

「うふふっ。辛いでしょう?タオルどうぞ」
結花が差し出したタオルで濡れた顔を拭き、
「…今日だけな」とタオルで顔を覆ったまま答えた。


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2005年08月30日

555+ (16)

千切れた「KEEP OUT」のテープが風にもて遊ばれている。
焼けた木々は切り倒され、切り株は子供達の新たな遊具となっていた。
あの日の出来事は新聞がマッチ箱ほどの大きさで公園の木々が燃えた事を伝えた。ただそれだけであった。
すべてが消えうせていた。
オートバジンとオルフェノクの残骸…ジローと海堂…555ギア、そして…真理。
巧が目覚めたのは病院の白いベッドの上であった。
警察もこの件を真剣に捜査しているとは思えず、事情聴取も早々に終わり、巧は晴れて自由の身となった。
あれから半月、巧は真理を探し街をさまよい歩き、疲れた足どりでこの公園に戻る毎日であった。
巧はベンチに腰かけ、ただ一つ芝生に眠っていた真理のシザーを握りしめ、朱に染まる湖面を見つめていた。
あれは…。
既に真理ではなかった。
ジローがなぜ真理を知っている?
「久しぶり…」と真理は言っていた。
二人の接点は何だ?
そして…。
立ち上がり、傍らの小石を拾いあげ、湖に投げ込んだ。
ぼちゃりと音を立て、浮き出た波紋が紅く笑っているようだった。
…「深紅の王」とはなんなんだ。
ベンチが軋み、勢いよくもたれた巧の身体を受け止める。
答えはやはり、スマートブレインにありそうだ。
オートバジンと555ギアを失った報告は終わっていたが、処分の回答もない。
ふと空を見上げると宵の明星が夕闇の境に輝いている。
ゆっくりと立ちあがり歩き始めた。
公園を抜け出て暫く行くと住宅街が見える。
その中の一軒にハッチバックを開けた車が停車している。
クリーニング屋らしい。
ビニールにくるまれた清潔な衣類が彩り良く並び、帰宅を待ちわびているようだった。
それをふわりと手早く丁寧に取り扱う男の表情は藍色の空の中で生き生きと輝いていた。
傍らを通りすぎようとした巧は「あっ!」と言う驚きの声に思わず顔を向けた。
クリーニング屋の男が巧を凝視している。
「あの…あのときはありがふっ!」
慌てて巧に駆け寄ろうとして左のスニーカーの紐を右足で踏み締め、転んだ。
仕事中の凜とした表情では気がつかなかったが、転んだ後の情けない姿で思い出した。
「…あの時の…サラリーマン?」
今はクリーニング屋の男が照れくさそうに笑った。
巧はその笑顔につられて…本当に久しぶりにぎこちなく笑った。

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2005年08月28日

555+MARI

長閑に漂っていた雲は蒼いプラズマと塵と消えた真紅の輝きを遮るように連なり、暗雲となっていた。
「お前達は…」巧の問いを擦り抜ける様に、ジローは海堂の元へ走り寄った。
灰にまみれ、石化したオルフェノクの残りの身体をジローが砕きわると人間の半身が現れた。
呼吸が楽になったのか、海堂は大きく溜め息を吐いた後、巧に言った。
「おめぇこそ…なんだ?」
身体の機能が回復していないのだろう。
ブルブルと震え苦痛に顔が歪む。
「俺は…」
なんなのだろう?
巧は自らを示す言葉に詰まった。
雨がぽつりぽつりと地にその証を示し始める。
海堂がゆっくりと目を閉じる。震える右手を左手で押さえ、引きよせた。
眉間には深い皺が寄せられ、海堂はうめく。「…おめぇにわかるか?意識が…俺様がもぎ取られて、だんだん小さくなっていく…感覚が」
激しくなった雨音が海堂の自我を蘇らせているかのようだった。
対照的に巧は俯き、雨雫が心を削りながしていく。
罪の意識にさいなまれ、委縮して固まった精神。
だが…ジローの呟きが冷えきった心に火をともした。
「マリ…」
巧はハッと真理の倒れていた場所を振り返って見た。
ジローの蒼く輝く瞳は、驚愕の色を浮かべて呟いた。
「なぜ…マリが…」
巧はゆらりと立ち上がる影を見つめた。
黒髪は雨に濡れ、だらりと垂れた頭にまとわりつき、表情を隠していた。
暗雲を抱き締めるかのごとく両腕を広げ、天を仰ぎつつ「マリ」は言った。
「久しぶりね…ジロー」
そう、あの時以来…。
そして…
「初めまして…深紅の王…」
長い髪の間から白銀の光を放つ漆黒の瞳。
巧の意識はその輝きに吸い込まれるように消えて行った。
崩れおちる瞬間に見た真理は…既に別の世界の住人だった。
一層激しさをました雨音が彼女の帰還を讃える喝采のように響きわたっていた。

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2005年08月24日

555+妄想ノート☆

ようやくここまで書くことが出来ました。
「仮面ライダー華○鬼」は短いお話で最後のシーンもストーリーの流れもほぼ決まっていた為、楽しく書くことができたのですが、「555+」は行き当たりばったりで書いており、頭に浮かぶラストシーンやお話も二転三転する有様であります。
「キカイダー」と合わせようと思っていたのでプラスの記号がついていたわけです。
「良心」というものをテーマにしたいな〜と思い、ジローと巧、オルフェノク海堂との不毛で無意味な争いを書きたかったのですが…う〜んであります。
オルフェノクが人間だと気がつきながら滅ぼす良心に霞がかかった巧。
自らの良心がプログラムされたものではないかと悩むジロー。
オルフェノクにされ、良心はおろか人間的感情を失う恐怖を味わう海堂。
…いやあ☆風呂敷を広げすぎました。
シナリオライターさんや番組製作者さんは本当にすごいと思います。
話をまとめ、玩具も売れるようにしなければならない…つまり商品価値を高める努力は並大抵のものではないと思います。
実際555はそのサスペンス仕立てに酔い、夢中になってみておりました。
小生も生意気に作品を評したりいたしますが、素人のたわ言、寝言でありますので大目にみてやってくださいね☆てへっ!

この妄想はまだ続きますのでご感想やコメントをいただけるとありがたいです。
それでは皆様、拙いブログ、妄想ではありますが、また遊びにきてくださいね☆
posted by hirotako at 02:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 555+... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月22日

555+(14)

「どういうことだ?」巧はうわずった口調で聞いた。
人工皮膚が灼熱に耐えかね、焼け落ちる。赤と青に色塗られた合金の頭蓋が見える。だがジローの眼光は衰えない。
「…気づいているはずだ」
ジローは右肘を力強く上げ、クリムゾンスマッシュを弾いた。
深紅の輝きは光の塵となって消え、巧はバランスを崩して地面に叩きつけられた。
「君が倒したオルフェノクは…人間だったということを」
ベルトから555フォンが外れ、乾いた音を響きわたらせてアスファルトを滑った。
フォトンブラッドの供給が止まり、555の変身が解かれた巧は汗に塗れた悲壮な表情をさらした。
地に両手と両膝をついた巧は固く眼を閉じ…震えた。
今まで灰にしたオルフェノク達の最後の言葉が響き渡る。

…たくみ…。
…いぬい…。

そうだ…俺は…。気がついていた。奴等は俺を知っていた…。

それは人間である可能性を示唆していた。
しかし、あの姿とスマートブレインの教育によってそこに至る思考は霧に覆われていたのだ。
いや…それだけではない。

クリムゾンスマッシュの誘惑。
それはメフィストの紅い囁きだった。魂を灰にする悪魔の諸行。その快楽に溺れたのだ。

ジローは巧に歩み寄り言った。
「クリムゾンスマッシュは魂を燃やす…だから僕を倒しきることはできないんだ」
怒りから憐憫の色に変わったジローの機械の目は絶望に身を焦がす巧を見つめた。
絶望は死に至る病だとキルケゴールは言った。死を知らない僕は…魂のない僕には…この絶望は永遠に続く苦しみなんだ。

「…僕は人間を…殺せない。それはアシモフ博士のロボット3原則がプログラムされているからだ…」

巧はジローを見た。
その視線を避けるように機械の露出した顔を背け、俯いた。

「ち…がう。おめえは…」

ジローがハッと声の主を見た。
オルフェノクが倒れ、乾いた砂の様に崩れていた。
サラサラと粒子が落ち、人の顔が現れた。

「いい…やつ…だからだ…」

絞り出すように言葉を紡いだあとニタリと笑った。

「海堂さん…」ジローの声は震えていた。

巧は見た。

ジローの機械の目に浮かぶ…人間の涙の輝きを…。

人造人間キカイダー(キカイダー)ZIPPOS.I.C.サイドカー&キカイダー

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2005年08月21日

555+(13)

オルフェノクはジローとオートバジンの闘いを身じろぎもせず見つめていた。ガトリングが火を吹き、けたたましく吠えている。

…オルフェノクは人間に死をもたらす化け物だと聞いた。

しかし…闘いを見つめるその目は悲しげで、感情の色が浮かんでいた。

…本当に…敵なのだろうか?

555はクリムゾンスマッシュを叩きこむことをためらっていた。

大地を震わせる程の轟音が響きわたり、程なく湖畔の木々に火の手があがり、水面を紅く染める。

揺らめく紅い湖面がが囁いた。
…なにをためらうことがある…奴を深紅の光で燃やして灰にしろ…

蒼い稲妻が走り、オートバジンの影は動かなくなった。

真理に目をやった後、555は装着したポインターに触れ、蹴りの構えをとった。

深紅の光がオルフェノクを射る。傘のように開き、555のエナジーキックを誘う光。
大地を踏み締め飛びあがるその刹那!
影が紅い輝きを割りオルフェノクの前に立ちはだかった。

横身で顔をこちらに向け、右腕をL字に折り、顎から頭部を覆った。
555を見つめる右目には先程までの憂いは消え、怒りが炎をあげていた。

555は蹴りを納めようとしたが既に遅かった。
クリムゾンスマッシュが遂に放たれ、飛び込んだ影…ジローの体を深紅の輝きが焼いてゆく。
ジローは炎につつまれながらも、閃光につつまれた555のキックを右腕肘で防ぎ、言った。
「なぜ…人間の心を簡単に燃やし尽くせるんだ?」

555…巧の心に生まれた動揺とは裏腹に、紅い衝撃はジローにいっそう食い込み黙らせようとしているようだった。

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2005年08月20日

555+Homunculus02

超小型熱核ジェットが蒼と緑に紅蓮の炎を挿し、オートバジンはジローと呼ばれた少年に襲いかかった。
その鋼の拳は地上のあらゆる形あるものを叩いて砕く魔の鉄槌だった。

ジローはギターを背中に回すと、紙一重でスレッジハンマーを躱す。
アスファルトを砕く轟音が耳障りだった。
震える大地の上に立つ、ジローに続け様に繰り出される鈍く輝く銀色の脚。切り裂かれる空気が放つ熱気が陽炎を揺らめかせる。
恐るべき蹴りの轟音をジローは右手一本で止め、瞳を青白く輝かせて言った。

「君に僕は倒せない…」

オートバジンのアイマスクが光輝き、それは収束されて薄緑のビームとなり、ジローの左肩を貫いた。
サッと飛び退き、左肩を押さえると腕を交差させて右肩を押さえる。
薄緑の光の筋が今度はジローの頭蓋を貫いたかに見えた。

否、交錯した両腕から輝き現れた青白いプラズマの光が薄緑の光の筋を弾いたのだ。
軌道が変わったビームによって湖畔の木々は貫かれ、一瞬にして炎に包まれた。
燃え盛る紅蓮の炎を背にジロー、蒼いプラズマをオートバジンに解き放った。
核攻撃の電磁障害にも耐え得る装甲、防壁にもかかわらず、高密度の電子回路はショートし、燃え上がった。
煙をあげ、動かなくなったオートバジンは今や銀に輝く不気味な彫像であった。

「THE END…」

呟いて俯く人造人間ジロー。
かつて秘密結社「ダーク」を壊滅させ、人間の心を手にしたジロー…。
心は…限りある命を照らし輝く光だと知ったとき、人造人間であるが故の無限の時は、月夜の荒波渦巻く暗黒の海のように絶望となって彼の眼前に広がっていた。

ジローは顔を上げ、向こう側で意識を失っている女性を見つめた。

「マリ…」

木々の燃え落ちる音に阻まれて、火の粉と共にその言葉は消え、深紅の輝きを見つけた刹那…。ジローの姿はもうそこにはなかった。

焼け焦げた絶望の香りだけを残して。

S.I.C VOL.1 キカイダー【予約 11月入荷予定】

人造人間キカイダー THE ANIMATION Vol.6(最終巻) ◆20%OFF!

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2005年08月15日

555+ (11)

空は蒼く輝き、雲は綿菓子のように白く、長閑にゆったりとした影を地上に落としていた。
オートバジンの放つ、ガトリング砲の轟音が景色に似合わず無粋だった。

オルフェノクの身体を銃弾が容赦なく貫き、破壊していく。
だが、破壊の速度を上回る再生能力により、衝撃に弾かれたオルフェノクは奇妙に踊っているようだった。
やがて…ガトリング砲の野蛮な死の音色は止み、焼かれた銃身はうっすらと煙をあげ、チリチリと鳴り、余韻を楽しんでいるようだった。

踊り終わった刹那!オルフェノクはオートバジンに向かって駆け、鋭い蹴りを放つ。
轟音が空気を震わせたが、オルフェノクの脚は鋼の拳に阻まれていた。

倒れている真理を見つめながら、555はゆっくりとポインターを右足に装着した。
化け物め…俺が灰にしてやる…。
深紅の華を咲かせてやろう。

フォトンブラッドをポインターに送り込もうとしたその時…。
時間が止まった。

やがて聞こえてくるギターの音色。

哀愁を帯びたその音階は、キラキラと輝く湖の水面に吸い込まれ、波紋を作る。

555は湖畔にたたずみギターを爪弾く少年の背中を見つけた。

「懐かしい…。」
ジャッ。
震える弦を押さえ、ゆっくりと振り向いた少年の瞳は憂いの光を帯び、一度蒼い空を仰いだ後、オートバジンを見つめて言った。

「君は…ダークの匂いがする…」

オートバジンは掴んだオルフェノクの脚を投げ放し、ギターの少年に向かっていく!

オルフェノクはアスファルトに叩きつけられ、こう呟いたのを555は聞いた。

「じ…ろ…う…」と…。

posted by hirotako at 21:38| Comment(3) | TrackBack(0) | 555+... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月11日

555+ (10)

オルフェノクの堅い灰色の手が伸びる。
真理を強く抱き締め、庇う巧の鼓動は生を渇望し、激しく脈打っていた。

「…深紅の王」
真理の囁きが爆音とグシャリといういびつな音に掻き消された。

オートバジンがオルフェノクの身体を弾き飛ばしたのだ!
オートバジンは誇り高き銀馬のごとく意思を持ち単独で走っている。

アスファルトに火花を咲かせ、散らしながら、数十メートル飛ばされたにも関わらず、オルフェノクは全くの無傷であった。
オートバジンが前輪をあげ、爆音を吼えた刹那!銀馬は驚くべき機構を以て人型に変形し、巧と真理の前に降り立った。

今や銀の魔神となったオートバジンが同じ色のアタッシュを巧の目前に落とす。
ケースに弾かれた陽光が囁いた。
「あの化け物にクリムゾンスマッシュを叩き込め…」

オルフェノクは既に立ちあがり、こちらを見つめている。

いいだろう…。化け物め。
俺が灰にしてやる!

ベルトを素早く装着し、コード555を携帯に打ち込み…
変身!
ベルトに差し込まれた携帯は深紅の光を巧に送った。
その輝く様は確かに真理の呟いた「深紅の王」にふさわしいものだった…。
posted by hirotako at 10:13| Comment(3) | TrackBack(0) | 555+... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月09日

555+ (9)

穏やかな陽光が作り出す連なり、緑色に乗って流れる二つの影は恐怖に怯え、駆け回る子鹿のようだった。
ヘビの様に見える身体を揺らしながら迫るオルフェノク。
ようやくオートバシンが見えてきた。
真理のこわばった表情はそれで緩むことはなかった。
オルフェノクはふと立ちどまり、空を見上げた。頭を揺らし首を回したその刹那!
蒼のキャンパスに緑が散り、銀色の身体が吸い込まれていく。
芝生を乗り越えアスファルトの駐輪場に駆け込む二人。
しかし…頭上を覆った影は轟音を響きわたらせて、アスファルトを砕いたあと…ゆっくりと立ち上がった。
真理はそのあまりの不気味な姿に立ちすくみ、遠のく意識をつなぎ止める事は叶わなかった。
恐るべき跳躍力で立ちふさがったオルフェノク!
「真理!」
巧は心の奥底に深紅の炎が燃え上がるのを感じた。
憎悪?…違う。
もっと原始的な欲求…欲望の炎。
早く555のクリムゾンスマッシュを奴に叩きこめ…。
揺らめく炎がそう囁いているようだった。

【新品】PS2 仮面ライダー555
posted by hirotako at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 555+... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月08日

555+ (8)

昼間は学校の時間の所為だろうか閑散とした芝生と遊歩道のある池のほとり。
「ありがと。練習台になってくれて」
シザーハンズのような真理と白い布を被り、てるてる坊主のような巧。
真理が手鏡を巧に渡す。
陽光が弾かれ湖面に飛び込み、キラキラと輝いた。
微妙にバランスがおかしいが…
「悪くない」
店内でシザーすら握れない美容師見習いにしたら上出来だろう。
安堵の表情を浮かべ、天を仰ぎ、真理はニコリと笑った。
巧は思った。これが夢を持つ者の笑顔なのだ…。そして俺はそんな風に笑えない。
巧をてるてる坊主にしていた布をほどき、真理はバサッバサッと扇ぎ始めた。
白い布と緑の芝生が交互に映える。巧はやがて銀の影が緑に浮かぶのを見つけた。再び白に覆われた後、それはしだいに大きくなっていた。
オルフェノク!
ゆっくりとこちらに向かって来ている。
「俺のバイクまで走れ!」
真理の手を掴み駆け出す巧。
白い布は風に舞い飛び、シザーがだらしなく足を開いたように地面に落ちた。
俺には夢がない…。だが真理の夢を壊させはしない!
それが人を守る心なのだということに気づかぬまま、スマートブレインの汎用バイク「オートバジン」に向かって巧は真理を連れて必死で駆けた。

バンダイ SIC Vol.29 仮面ライダーファイズ ブラスターフォーム&オートバジン



posted by hirotako at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 555+... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月07日

555+ (7)

コード555「ファイズ」によって衛星から放たれた強化服起動の為の光の粒子が巧を包む。
その閃光はやがてベルトから流れるフォトンブラッドによって塗り替えられ、深紅に染まる。
再び夜が闇の色を取り戻した時、そこに立つ者は…。
漆黒の体に銀のアーマー、ベルトを着け、昆虫の複眼を大きくしたヘルメットは黄色く輝き、Φ(ファイ)の記号の様に見える。
強化服のエネルギーであるフォトンブラッドは深紅色の力強い線となって四肢に伸びている。
右手を軽くシュッシュッ!と2回振り…555に変身した巧は言った。
「俺が相手するよ」
相手はオルフェノクだ。人間を選別して仲間を増やし、非適格者は殺してしまう化け物に遠慮などいらない。実験を終え、正式にスマートブレインのオルフェノク狩りに参加することになってから一ヶ月。
巧は人を助けているのか、それとも…狩りを楽しんでいるのか解らなくなって来ていた。
オルフェノクに打ち込まれた555の拳は数十トンの衝撃と鈍く激しい音を生み出した。だが、驚くべきことに戦車の装甲ですら貫くその威力を以てしてもオルフェノクにダメージはなく、巨大なハサミを振り下ろしてくる!
チッとヘルメットに軽く火花を咲かせながらも避けたそれはアスファルトで固められた大地を砕き、震わせた。
終わりにしよう…。555は素早く後ろに飛ぶと、ベルトに差しこまれた携帯555フォンからΦ型のピンを取り出しポインターに取りつけた。それを右足に素早く装着し、オルフェノクに向ける!
深紅の光が円錐状に広がり、その突端はオルフェノクを襲いかかる牙のようだった。
クリムゾン・スマッシュの光はまた…オルフェノクの墓標でもあった。
その光に入り込むかのように飛び蹴りを放つと円錐の光はドリルのように回転し、オルフェノクの分子構造をほどき、破壊していく。
やがて貫くように透かし、555が飛び蹴りから着地した時、オルフェノクはゆっくり振り返った。
その刹那、灰となって崩れおち、闇に吸い込まれていった。
サラリーマンは…息がある。
あとは会社がなんとかするだろう。
だが…なぜオルフェノクは崩れ落ちる瞬間、こう呟くのだ。
「いぬい…」あるいは「たくみ…」と。

仮面ライダー/仮面ライダーファイズ劇場版オリジナルサウンドトラック(CCCD)

posted by hirotako at 18:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 555+... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月06日

555+ (6)

足がガクガク震え、脂汗が吹き出してくる。
まるでザリガニを模した灰色の鎧を着たような化け物が紺色の背広をきた男性にじりじりと迫ってきた。
最初は仕事帰りに少し呑みすぎた所為だと思っていた。
だが…この苦痛が否応なしにこれは現実だということを示していた。
安物の背広は化け物が振り下ろされたハサミで引き裂かれ、赤く染まっている。
嬲りながら狩りを楽しんでいる…。
そう思いついた時、恐怖は頂点に達した。
叫ぼうにも既に声すらでない。絶望という感情すら消えうせようとした瞬間!
長髪の若者の姿が化け物の向こう側に見えた。
腰には銀のベルトを巻いており、見たこともない携帯電話を片手で揺らすように開け、ダイヤルを押し、ゆっくりと耳元に押し当てていく…。
「変身!」と言う声を聞いた後、ぐらっと景色が揺れ、夜の闇と同化するように意識が遠のいていった。

半田健人/半田健人 パ-ソナルDVD
posted by hirotako at 18:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 555+... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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