めっちゃ高い自転車で京都市内をうろうろしたいなあ

2006年09月11日

エブァーエンディングスト〜リ〜♪←裏声

ニュ〜タイプ今月号の表紙を見て愕然といたしました。

エブァ完全新作映画製作!
内容も完全に練り直した4部作になるんです。

そして現在のアニメ事情のアンチテ〜ゼでもあるとのことであります。

だいたい前回の2部作ではなぜ終った物語のコンテを切らねばならぬのかと嫌々渋々ではありませんでしたっけ?

並んで並んでようやく観た映画に込められた「おまえらアニメばっかし観てキモッ」ってテ〜ゼならもう勘弁してください(/_;)

しかしなんだかんだ言いながら観に逝くんだろうなあ(T-T)

ポケモンセンター☆

060911_1659~001.jpg今日は素敵息子が参観日の振替休日なのでポケモンセンターオーサカに来ております(^-^)/

いやあ!子供も大人も頬が緩む可愛いポケモン達の素敵アイテムで一杯だp(^-^)q

続く!

2006年09月05日

ブラロマOP♪FLASH化計画♪

BLOODY ROMANCE通称「ブラロマ」やっとこさっとこ終劇と相成りました。

ca.jpg

生まれて初めて書いたオリジナル妄想でございましたので愛着も一入だったのですが、終わらせることが出来て一安心であります。

この妄想話に有難いコメントや素晴らしい画を頂いたりいたしました。

ほんまにありがとうございました。

しばらくお休みをいただいた後、短編の「蟲愛づる姫」か「桔梗の華」かどちらかを連載いたしますので、またご愛顧いただければ有難いことでございます。

さてこれまた妄想でございますが「ブラロマOP」をFLASHで創りたいな〜なんてこれまた無茶な白昼夢を見ている次第でございます。

あんまし難しいのは出来ないので吃驚するくらい簡単なやつw

それでも良いのです。だって自己満足なんですから!

小生のイメージではOPは以前にも申しましたとおりこの曲

ちなみにEDはこの曲でございます。

さっ!またFLASHについていろいろ調べちゃおうっと♪

ああっ!妄想人生楽しいなっ!うふふっ☆あははっ!

あっ!はい!現実も直視して頑張りますので見捨てないでくださいね☆

2006年09月04日

BLOODY ROMANCE

眼下に広がる雲の透き間から波のうねりがキラキラと輝く蒼い海を見つめ、私は溜め息をついた。
伝説の娘はこの命を育む恵みの光を浴びることはないのだな…と思い、あの青年の瞳にこの輝きはどのように写っているのだろう…と、眼下の海に答えを求めるように、眩い蒼に目を細めた。

あの深い森の奥の不死者の領地の出来事から4日……。

快適な旅客機の旅とは裏腹に私の心は霧に包まれていた。
城の買い付けが不可能だった報告は部長の「無能!」の罵声と電話を叩きつける音で断ち切られた。
だが、彼は最初から知っていたのだ。
あの城の買い付けなど不可能だったということを。
ドイツの写真家の妄想と戯言を知った上で私に買い付け交渉を命じたのだ。
しかし…それが事実でしたなど…どう報告すればよいのだろう?

……ただ、その城下には伝説があってな……。

今から思えばニタリと笑った部長の目には悪意の輝きが見えていた。
目立ちたがり屋の社長を担いでこれから大きくなっていく会社で出世するために、私は邪魔者に映ったのだろう。
数々の机上の絵空事を実現して来た事が反って仇になったのだ。
この失敗で私は交渉能力を問われ、閑職に追い込まれるだろう。
その為に家族を失い、自分を見失い、そして最後の拠り所だった仕事の熱意さえ失おうとしている。

フライトアテンダントが優美な手つきで煎れてくれたコーヒーを啜りながら、ひょっとするとあの森の出来事はやはり夢なのではないかとの想いが過る。
現世に帰ってきた翌朝の朝刊にはアウトバーンで交通事故に遭って亡くなったドイツ人写真家夫婦の悲報が報じられていた。
ハーブ・リッツが友人の死を悼むコメントの上に鋼の塊と化したベンツの写真が掲載されている。
そこには亡骸が炭化していたのが納得できる事故現場の空間が切り取られて収められていた。

心の霧を払うようにポケットを弄り、あの日得た記憶の品を握り締める。
別れ際にアデルが思い出にとそっと手渡してくれた品、それは聖母マリアが描かれた大きなメダルであった。
1830年11月27日のパリの愛徳姉妹会の修道女見習であったカトリーヌ・ラブールは、槍で貫かれたキリストの聖なる心とともに浮かぶ聖母の啓示を受けた。
この奇跡を模したメダルを創るようにと。
カトリーヌの無垢な熱意はやがて大司教をも動かし、数百万個にも及ぶメダルが人々に希望を与えることとなった。
1859年に「無原罪の御宿り」と共にルルドにて奇跡の泉を掘り当てたベルナデッタもこの「奇跡のメダル」を終生身につけていた。
出会うことはなかったが「無原罪の御宿り」によって奇妙な縁を得た二人はやがて聖人として列福されることになる。

生命はめぐりあいによって生まれてくる。
絆は生命の紡ぎあいによって強固に結ばれてゆく。
ならばそれを結ぶ縁とはなんと尊い奇跡なのであろう。
生きてゆくこと……それだけで私達は奇跡の具現者となっているのだ。

メダルを握り締めたまま何時の間にか眠ってしまったらしい。
目覚めた時には窓の外はすっかり闇に覆われ、星の瞬きと人智の輝きの狭間に機影が滑り込もうとしていた。
滞りなく帰国の手続きを済ませ、誰もいない家に帰るかホテルに泊まるかを思案している最中に携帯電話が鳴った。
もう二度と聴きたくないと思っていた部長のくぐもった声が耳に纏わりついてきた。
「……君の近くにテレビは在るか?」
すぐそばの喫茶室の扉を開けると数名の客が液晶の画面に釘付けになっている。
見慣れた顔が画面の端に映り、騒がしい逮捕劇とテロップに一瞬目の前が眩んだ。

「……社長が逮捕?」

「そうだ」と上ずった声で部長が応えた。
そして改まった口調で私に懇願してきた。
「会社ではすでに顧客や株主からの問い合わせが殺到しているんだ。君も事態の収拾に力を貸して欲しい」
「……」
私の沈黙に部長は絶叫した。
「買い付けの件はすまなかった。頼む……。君の問題解決のコネクションがどうしても必要なんだ!」

私はもう一度メダルを取り出し、「無原罪の御宿り」の画を見つめながら応えた。
「……わかりました。これから真っ直ぐ本社に向います」
部長のすこしばかりの安堵のため息に続け様に言い放つ。
「ですが部長のためではありません。私自身のためにです」
電話を断ち切った後、タクシーを停めて行き先を告げる。

そして、あの時脳裏に染み渡ったカーマインの言葉を思い出していた。

……其方は其方の世界で衿持を保て……。

嘗てアリエッタの父は許すことの尊さを説いたという。
それは衿持を保って生きるものにしか出来ぬことなのだ。

人々の営みが放つ地上の光がフロントガラスを抜けて流れこんでくる。
それは五里霧中の人生の中で、衿持を取り戻した私を祝福している輝きのようであった。

<終劇>


2006年08月29日

BEANIE BABY☆素敵ヌイグルミ

060829_2142~001.jpg実は小生カッコイイモンスキーでありますが、可愛いモンスキーでもありますp(^-^)q
しかしなかなか「かわいいねえ」と頬を緩ませてくれるモノには巡り会えないんです(/_;)

BEANIE BABYはその中でもぐっと来た逸品であります。

写真はMOOCH(^_^)b
つぶらな瞳に胸キュンでありますなあ!

このシリーズはお手頃価格の割に作りが確りしていてタグにはお誕生日まで入っているんです。

素敵動物ヌイグルミなのですが京都では意外に取り扱い店が少なくてあちこち探し回ったものであります。
ところが京都市動物園の売店で発見してビックリ(>_<)
しかしなかなか良いセンスと感心した次第でありました。

さて小生が可愛いものを愛するキッカケは年上の従姉妹がヌイグルミつくりプロ級でありまして、当時小学生だった小生は高校生だった彼女にフェルトの簡単なヌイグルミの作り方を教えてもらったものです。

カエルのヌイグルミの頭部が非常に綺麗に出来たので友達に自慢したところ、それがどないしたん?と冷たくあしらわれ、やがてヌイグルミの事など想い出の片隅に追いやられていったのでありました。

数年後。
小生の母が愛用している針箱であの頃造ったヒヨコのヌイグルミと再会を果たすことになります。

黄色い体と大きな目が可愛いヒヨコに突き刺さった幾本もの針。
そう…針山として活躍していたのでありました。
息子の作ったヌイグルミを針山にする素敵なセンスに脱帽しながら針箱を見つめた覚えがございます。

余談ですが小学校でもヌイグルミつくりの授業があれば面白いのにと思います。
で、完成品はフリマで売れば商売の勉強になるし、恵まれない国の子供達の玩具として送れば交流が生まれて勉強になるし(^_^)b

だってヌイグルミは世界中で愛される平和な玩具の一つなのですから(^-^)/

だからヌイグルミを針山なんかにしちゃ駄目ですよ〜(*^-^*)

BLOODY ROMANCE

樹齢二千年を超える大樹が丘から石畳の広場を見下ろしている。
人間の営みなど所詮小さなものに過ぎぬのだと。
だがしかし脆くはかないからこそ、絆は強固に紡がれてゆくのだと。

嘗て殺戮と破壊の舞台となった広場には千人ほどの老若男女の領民達が集い、夕日が染めた
金色がやがて橙色に変わる頃、祭りは死者を慰める黙祷から始まった。

つい先ほどまで嬉しそうにアリエッタとの思い出話に華を咲かせていたアデルも
今は神妙に祈りを捧げている。
数年前に亡くなったという祖母のためなのだろう。
滲んだ雫がアデルの横顔に茜色の輝きが伝っていく。

そして放たれた鳩の白い羽ばたきが一瞬夕空を覆い尽くし、やがて眩しい光の中に飲み込まれていくと笛と太鼓が陽気な音を奏で出した。

お祭りの始まりだ。

この世のすべての色が揃えられたような皿には新鮮な果実と野菜が更に彩りを加え、
飴色にローストされたチキンや、桜の香りがする燻製肉が並べられた長いテーブルには人々が群がり、アデルもそこで頬を膨らませながら食事と歓談を楽しみ、にっこりと微笑んでいる。
私もアデルに引っ張り回されながらお祭りに興じていた。

酒を飲んで陽気に歌って踊っているうちに、何時の間にか茜色の輝きは闇の底に沈んで宝石のような瞬きが藍色の空に散りばめられている。

人々の享楽と星々の瞬きの間にそのピアノは置かれていた。
誰もがハンマーが弾く弦の音を楽しみ、華麗な演奏にもそうでない戯れにも惜しみない拍手と歌が注がれている。
「うふふっ!おじさま。私も少しは弾けるのよ?」
何時の間にか私をおじさま呼ばわりするようになったアデルはピアノの前にちょこんと座り、やがて三つ編みと身体を揺らして演奏を始めた。
聴いた事がない曲であったが、明るい調子に乗せた歌声は広場の隅々にまで届き、拍手喝采で皆が応える。
時折目を閉じて恥ずかしそうに鍵盤を叩く彼女の奏法は私の娘にそっくりだった。

娘も娘の為に買ってやったピアノも今は他人となった妻の所へ行ってしまった。
仕事ばかりで父親らしいことなど何一つしてやれなかった。
唯一の絆がピアノだったとは、なんと情けない父親だったのだろう。
「どう?おじさま?楽しい曲だったでしょう?」
そう言ってアデルはにっこり微笑んだ。

「…私も弾いてみようか?」
その言葉は少し予想外だったようだが、アデルはすぐに悪戯っぽく微笑んで
「おじさま弾けるの?」
と嬉しそうに私をからかった。

奇妙な服装の異世界の住人が壇上に設けられたピアノの前に座ったからであろうか。
領民達の耳目が一斉に注がれ、祭りの熱気が数度下がったようだった。
ピアノは18世紀に原型が発明され、19世紀には工業製品化されて世に広まることとなった。
目の前のピアノはどうやら、19世紀後半の代物らしい。
力を抜いて指先をそっと鍵盤に置き、息を吐いた後に一気に娘のお気に入りだった楽曲の記憶を叩き込んだ。
会社の余興に覚えた曲だったが、娘はなぜかこのサンバのリズムを聴くと笑い転げて一緒に歌ったものだった。
「ブラジル」など当然初めて聴くのであろう。
領民達は呆けたように顔を見合わせていたが、それも暫しのことでいつの間にか皆踊りに興じている。

演奏が終わるとアデルが手を叩きながら、壇上に上がってきた。
彼女だけではない。
すっかり打ち解けたのであろう、顔を朱に染めた酔っ払いがぶどう酒を勧めてくれ、頬を緩ませたご婦人が肉料理を勧めてくれた。
皆が笑っている。私もその中心で笑った。
こんなに笑ったのは久しぶりだった。
そのままお祭りは最高潮を迎えようとしていた。

「……おじさま」
アデルが少し寂しそうに微笑みながら、私に声をかけて来た。
その華奢な腰のあたりにサッカーボールほどの大きさの輝きがキラキラと輝いている。
「そろそろお別れの時間だって。霧丸先生が」
彼女の周りをゆっくりと漂う鬼火は私の案内役であった。
「……そうか。お別れか」
「さようなら…おじさま」
鬼火はフッとアデルから離れ、別離を促す。
「ああ…アデル。いろいろ有難う」

さようなら…。
お祭りの音楽が少し止み、皆が手を降り始めた。
酒を愛する者はグラスを掲げ、そうでない者は両手を掲げている。
有難う…。さようなら…。
私も両手を掲げ、惜別の気持ちを乗せて思い切り振った。
そして、鬼火に導かれて森に向って歩みを進めていく。

広場の輝きはだんだん小さくなり、森の裾に達したとき
「おじさまー元気でねー!」とアデルの声がここまで聞こえてきた。
「アデルも達者でな!皆に宜しく!」と私も応えたが、彼女のような破壊的な大声ではないので広場まで届いたかどうかは判らなかった。

その刹那、輝きが夜空に打ち上げられて星々の瞬きを霞めるほどの鮮やかな色彩をばら撒いた後、静かに消えていった。
……花火だ。
何発も何発も放たれるその光は闇空に輝いて、地上に立つ物の影を落としている。
その中で塔の影が長く伸び、その頂点に座る人影に私は気がついた。
昨晩、壮絶な戦いが繰り広げられたその石塔は修理が進んではいるが、屋根は崩れたままであった。
その屋根の瓦礫に座り、広場を見つめるその姿を夜に放たれた色彩が浮かび上がらせていく。
赤い髪は夜風に吹かれ、様々な輝きを吸い込んで尚紅く輝くその瞳。
白銀の甲冑につつまれたその娘の姿は…。
永久の闇のなかでウリエルの業火につつまれながら、この地を照らすという列福の不死者。
「カーマイン…」
私は思わず叫んでいた。
「私を…私もここで暮らせないだろうか?!現世に帰っても、もう私の居場所などどこにもないんだ!」

彼女はその叫びに一瞥もくれることなく、領民の集う広場を見つめていた。
だが、霞みに包まれる寸前に脳裏に染み渡ってきた彼女の言葉を私は生涯忘れることはないだろう。



2006年08月28日

はぐれ悟空☆脱力系

060828_1856~001.jpg素敵息子は小生が言うのもなんですが、大変画才があると密かに…いえ大っぴらに思っております(^_^)b

その才能は妻の素敵遺伝子の発芽なのです。

素敵息子の為の作品
「はぐれ悟空☆脱力系」は彼女の才能爆発の素敵な逸品と言えるでしょう(^_^)b

闘いなどまったく無縁の脱力系サイヤ人…次回は是非「無気力王子べジ〜タ」
に挑戦して欲しいものです。

2006年08月18日

BLOODY ROMANCE

開け放たれた窓から迷い込んだ風が、霧丸の煎れてくれた紅茶の香りを浚っていく。
外では祭りの準備もそろそろ終わったようで、子供達の嬌声が洩れ聞こえてくる。
そして澄み渡るような青色を湛えていた空はいつの間にか朱色となって、この世界を金色に染め上げようとしていた。

「だから今日はあの日失われた魂達を慰める鎮魂のお祭りなのです」
霧丸はそう言ってニコリと微笑んだ。
私はもう一度焼け焦げた「我が闘争」の表紙を見つめ、この地へ案内しようとしてくれた写真家の言葉を思い出す。

…俺もそうだったよ。ナチの衛生兵だった叔父貴の言う世迷い事などな…

この地に関わった彼の叔父は狂人扱いされて失意の内に死に、彼自身も闇空に輝く2つの月光の下で不本意に死んだ。
その死を悼みながら、私は現世に帰っても今日の出来事は誰にも話すまいと心に誓った。
だが……。現世に帰れたら?
帰って何があるというのだろう?
家族を失うほど情熱をそそいだ仕事だったが、今はただ燃えかすのような虚しさが残るばかりであった。

霧丸はそんな私の横顔を見て、何か感じるものがあったのか穏やかな口調で言った。
「今日と明日の境目には貴方はご自分の世界へ帰れるでしょう。それまでお祭りを楽しんでください」

その言葉が終わるや否やドアがけたたましくノックされ、霧丸が渋がりながらも微笑んで入室を促すとアデルが部屋に飛び込んできた。
息を切らし三つ編みを揺らせながらアデルは嬉しそうに叫んだ。
「先生!お祭りの準備が終わりました!早く早く!夜になったら先生動けないもの!」
あまりの大声に私は気が遠くなり、書斎の本が数冊書架から滑り落ちて埃を舞い上げる。

「アデル……。お客様がいらしているのだからもう少し行儀良くなさい」
霧丸は呆れ顔で彼女を嗜める。
祖母であるアリエッタの面影を色濃く受け継いだ三つ編みの娘はチロリと舌を出し、ごめんなさいと素直に謝った。
「私は仕事があるので残念ながらお祭りには行けないが、お客様をご案内してくれないか?」

アデルは私の方を向きスカートを両手で掴んでお辞儀をし、挨拶をした。
私も簡単な自己紹介をして、よろしくと言うと彼女はニコリと微笑んで私の手を取った。
「じゃあ先生!お仕事頑張ってください!お客様とお祭りに行ってきます!」
結局霧丸の嗜めはあまり効果がなかったようで、来たときと同様に大声を張り上げて私を引っ張って行く。
私はホルスターに収められた黒い銃と義務が背負わされた彼女の可憐な背中を見つめ、霧丸の苦笑を背に受けながら夕と夜の境目を走っていった。




2006年08月14日

BLOODY ROMANCE

命をたっぷりと吸い上げた灰色の雲が破壊された城と領民たちの村々を覆い、霧雨が夜明けの地平を濡らしている。

霧丸は馬を駆り、瓦礫と泥濘と化した領地を疾走していた。
太陽の輝きは届かず、途切れそうな意識を焦燥が駆りたてる。

銃声が轟いた後、地下礼拝堂で息を潜めていた領民達は勇気を振り絞って鉄の扉を開けた。
敵に一矢報いるべく、さまざまな得物を手にした彼らが見たものは、憔悴しきって倒れているヘルシングの銃を持つ娘だけであった。

領民の誰もが愛するその娘は薄汚れ、目は落ち窪んで隈が浮き出ていたがその口元にはどこか満足げな微笑があった。

ここで何があったのか誰も知らない。どのような敵と彼女が対峙したのかも判らない。
だが、その微笑みに領民達は安堵の息をもらし、たった一人で戦い抜いて冷え切った彼女の身体を毛布でくるみ、暖かいスープを用意して目覚めを待った。

分厚い雲に覆われてはいるがどうにか迎えた夜明けに霧丸も目覚め、アリエッタの無事の知らせに胸を撫で下ろしたのもつかの間、領主の姿がどこにも見えなかった。

書斎にも。
棺にも。
薔薇園にも。

陽光は分厚い雲に遮られているとはいえ、その苦痛は「聖者の炎」の比ではないはずだ。

最後に思い当たる場所に向って霧丸は馬を走らせた。
森のはずれの石塔は城と村と畑が一望でき、カーマインはそこで安らかに眠る領民達の姿を見守りながら長い孤独の一夜を過ごすのだ。

嘶く馬から飛び降りて、石の階段を駆け上り、頂上の扉を開けると…。

廃墟となった家屋…。
荒れ地となった畑…。
燃え盛る炎の煙で、空は灰色に覆われている。

汚された地上を洗い清めるように降り頻る霧雨の中に佇む彼女は背を向けたまま赫髪を震わせて呟いた。

「ごめんさい…」
ルルドの泉でベルナデッタの慈悲に触れ、もう一度人間を信じてみようと思った。

「…ごめんなさい…」
放たれた弾丸からその身を投げ出して庇おうとした霧丸の無私に触れ、もう一度人間を愛してみようと思った。

だが、結局は内に潜む悪意に抗うことが出来ず、眼下には無残な光景が広がっている。
領民達の愛してくれる村が燃えている。
貴方が愛する領民達の営みが瓦礫の山と化している。

霧丸はそっと歩みより、身を寄せて悲しみにくれるその背に手を触れた。

呪われた身体を燃やす業火は霧丸すら包み込んでいく。

「帰りましょう。そしてまたやりなおせばいい…」

少し振り返った赫髪の奥に打ち抜かれた右目が覗く。
涙を失った不死者の頬を霧雨が濡らし、やがて雫が一筋…悲しみを伝って、ぽとりと落ちた。

凄まじい破壊の中で残されたその石塔は、この世の果てにすらある希望を示すかのように揺ぎ無く聳え立ち、
その頂上で穏やかな生と安らかな死を失った二人は、霧雨が洗い流す絶望の景色を見つめていた。

いつまでも…。いつまでも。

2006年08月11日

BLOODY ROMANCE

嘗てリリスの夫であったアダムが禁断の果実を口にした瞬間から肉欲は生まれ、すべての罪の源泉となった。
永遠の命は失われ、やがては腐って朽ちていく肉なるものに堕した人間達。

永遠の楽園に植わっていたという「生命の樹」。それを模したと言われる「カドゥケウスの杖」は錬金術そのものを示していると言われている。
それをもって練成される「賢者の石」
エリクシール・エイジャの赤石・赤きティンクトゥラと呼ばれる赤い輝きは神々の奇跡の結晶なのだ。
人間には決して練成出来ぬその奇跡を手にした神人の曾孫は、大天使ウリエルに大洪水と世界の終末を教えられ、箱舟を作り世界中の命と共にアララト山へ漂着することになる。

ウリエルの残した蒼く輝く業火は片翼を焼き落とし、それでも尚、世界を数度滅ぼす力を持ったリリスは奇跡の結晶の香りを背の果てに感じ取った。

気配を押し殺して迫りくる娘に語りかけるようにリリスは呟いた。
「貴女からはエリクシールの匂いがするわ…なぜ撃たなかったのかしら?」

アリエッタは荒れる息を整えて、凛とした声音で応えた。
「…この銃を受け継ぐ一族は、獲物を背後からは撃たないわ」

リリスは少し微笑んで、振り返りアリエッタの瞳の奥を見つめた。
昂ぶる感情を押さえ込む意思の輝き。
怯えも恐れも迷いもない、美しい人智の光。
その光こそが希望を生み、人の世を紡ぐのだ。

「気高い娘よ。お名前は?」
蘇ってから初めて人間を見た気がするわ…そう思いながらリリスは尋ねた。

「アリエッタ…」
静かに名乗った娘の銃身には恐らくエリクシールの欠片が弾丸として篭められているのであろう。

「アリエッタ。賭けをしましょう」
リリスは獣の数字が刻印された右目を指差して言った。
「3つ数えた後に見事、この目を撃ち抜けたら貴女の勝ち」
そして楽しそうに笑って続ける。
「失敗しても安心なさい。貴女は私の娘として可愛がってあげるわ。世界の終末の後でね」

アリエッタはフッと目を閉じ、僅かに残る感情の澱を吐息と共に捨てた。
「わかったわ。始めましょう」

リリスの声音が淡く蒼い光に包まれた回廊に響き渡った。

「ひとつ…」
霧丸先生…。

「ふたつ・・・」
カーマイン様…。

「みっつ…」
おとうさま!

やがて響き渡る銃声の果てに世界を覆った光は、世界を焼き尽くす蒼白い終末の炎の輝きか、贖罪を続けることを許された神々がもたらす再生の紅い奇跡の炎の輝きか…。

2006年08月10日

BLOODY ROMANCE

アリエッタが西の空に立ち上った炎に向けて疾走している頃、リリスは地下礼拝堂へと続く螺旋階段をゆっくりと降りていた。

地下深く潜んでいるにも関わらず伝わってくる破壊と殺戮の衝撃と衝動に怯えながらも、領民達の心から諦めのため息が洩れることはなかった。
信念と希望の色濃い生命の香りが、一層リリスの食欲をそそる。

生を慈しみ、死を悼む。
獣と人の違いはそれが出来るか否かにある。
先ほど血の海に溺れさせた者どもは紛れもなく人の形をした獣であった。
万物の霊長の呼び名に値しない存在であり、リリスにとってその魂は悪臭を放つ腐った果実に過ぎない。

もうすぐよ…果実をもぎ取るように優しく、屠殺するように一瞬だからそんなに苦しまないわ。

飢餓を制する喜びに溢れた横顔を松明が照らし、巨大な回廊の果てにそれに相応しい鉄の扉が淡く輝いて見える。

しかし、リリスは立ち止まっていた。
その形を取り戻しつつある切り落とされた筈の左手を見つめていた。

幼い女の子が無邪気な顔で走りよってくる。
小さな男の子が悪戯っぽく覗き込んでいる。
白い靄が立ち込めて、その中で遊ぶ数百人の子供達。

その向こうでゆっくりと立ち上がり始めた、女性の姿をした蒼い影。

リリスは懐かしい友人を迎えるように、微笑みながら挨拶をした。
「久しぶりね。地獄のお仲間は息災かしら」

神の炎の称号を持ち、太陽の統率者であり、人の魂を守護する地獄の支配者。
その業火は地獄の罪人を永久に焼き、恐怖と絶叫と苦しみをもって最後の審判に臨む大天使。

「…ウリエル」
そう呼ばれた蒼い影は左手を上げた。
リリスの左手に焼き付けられる刻印…それは…。
たちまち蒼白い炎につつまれたリリスは笑った。
「この娘は本当に哀れね。ミカエルの声を聞いたばかりにその身体を焼かれ、貴女の聖痕が打ち付けられたばかりに魂までも焼かれるなんて」
そして口角を上げて、無情の大天使を睨みつけて言った。

「さあ、最後の審判と黙示の始まりね。二人で世界に火を放つのも楽しそうだわ」

無邪気に遊ぶ子供達の魂が聖痕に吸い込まれるのを見つめながら、ウリエルは応えた。
「残念ながら貴様の相手は私ではない」

そして白い靄と蒼白い影は四散して消えていった。
だが、変わりに聞こえてくる確かな息吹。
蒼白い業火に身を委ねながら、背を向けてリリスは待った。

対峙に値するという人間の到着を。

2006年08月08日

ききょうのはな

厳しく、辛い時代ではあるが子供達の眼は真夏の太陽に煌めく清流のように、神父に安らぎを与えてくれた。
芋畑に落ちた十字の影と畑を耕す子供たちの姿を見つめ、平和の世と人の世に祝福あれと祈った時、閃光がそれに応えた。

白い輝きの中、神父に向けて微笑んでいた娘の両目は凄まじい圧力に耐えきれず眼球を溢し、畑で空を見上げた少年は太陽の表面温度と同等の熱によって人の形をした炭となり、聖母が描かれたステンドグラスは粉ごなに割れ、神父の全身を貫いた。

血の涙を流し、朱に染まった地獄の中でのたうつ彼を今まで葬った「怪夷」達が笑う。
昭和20年8月9日10時58分。
人類が作り出した最も愚かな輝きはあろうことか再び炸裂し、未来までも焼いていく。

神父の心は塵となり、精神は灰となり、響わたる笑い声に呑まれて消えていった。

2006年08月05日

BLOODY ROMANCE

アリエッタは降りしきる大雨と雷鳴轟く闇の中、疾風となって駆け抜けていた。

薄れゆく領主の魂を救うために。
罪なき領民の魂を救うために。
そして亡き父の魂を掬うために。

城から村を繋ぐ広場へと至る道筋で若き狩人は微かに、しかし確かに幾多の絶叫を聞いた。
やがてそれは骨の砕かれる音へと変わり、肉が食いちぎられる音が加わり、凄まじい悪意の奔流が押し寄せてくる。
大粒の雨雫でも消しきれぬ血生臭い匂い立ち込めるようになった辺りで、アリエッタは濃緑に聳える木立の中で気配を消した。

恐らくリリスが蘇らせたのであろう。
蠢く鍵十字の兵士達の死体が、同朋である筈の重ね稲妻の黒服達を食い散らかしている。
両者の間でなにがあったかは容易に想像がついた。
凄まじい復讐の念が肉片も骨片も残さず平らげ、荒れ狂っていた血の海もいまは穏やかな朱の波となっていた。

獲物の姿はここには無い。

しかし、西の村で突如上がった火柱を見てアリエッタは息を整えた。
「私は…」

そして、再び闇の中へと滑り込んでゆく。
「守ることを諦めない…」

終末の前奏曲のように大地が震えていたが、その想いは決して挫けることなく駆け始めていた。
…西へと。


2006年07月30日

BLOODY ROMANCE

どれくらいの時間が過ぎ去ったのであろう。
白く塗込められた世界の中で、アリエッタは自分の存在を確かめるように頬を撫で、両の掌を見つめた。
ここは天国なのだろうか?
それとももっと恐ろしい違う場所なのだろうか?
濃霧に遮られた視界の中に、命の色彩を見つけようと怯えた目が動く。

「アリエッタ…」

霞みが晴れぬ意識ではあったが、その声音の温もりを忘れる筈がなかった。

「…おとうさま」

濃霧の中から現れた痩身の男の柔和な表情が、娘の涙声に応えた。
父親は疲れた栗色の髪を節くれだった大きな手で、美しい艶を取り戻すように優しく撫で、娘は少し俯いてその気持ちを汲み取っていく。
アリエッタの背中のホルスターに納められた黒い銃を見つめながら、彼は言った。

「その銃は私のものだ」

やがて父親の手はアリエッタの肩に置かれ、その指先に強い意志を受け継がせるように力が込められていた。

「だが、これからはお前のものだ」

アリエッタの双眸から涙が溢れ、父親に抱きついてすがった。

「いや!おとうさま!逝かないで!」

父親もまた娘を強く抱きしめ、惜別を嘆いた。
しかしそれを振りほどくように、娘の両肩をつかんで身体を離す。

「アリエッタ。暗い闇の渕から領主様をお救いし、領民を守るのだ」
「無理です!私にはまだ無理です…」

白い霧の中へ落ちては消える涙の雫を優しく拭い、絶対的な殺戮者との対峙を恐れる娘を諭した。

「アリエッタ…よくお聞き。私とてお前や妻、仲間と別れるのは寂しく、辛い」
娘の頬を父親はゆっくりと撫でていく。
「だが、私はお前を遺せた。生きるとは何かを残していく事だ。お前を授けてくれた神に感謝し、生んでくれた妻に感謝し、そして…」
穏やかに語る父の顔を娘は涙にくれながら、じっと見つめた。

「なによりも健やかに育ってくれたお前に感謝している」
最後の嗚咽を振り絞り、アリエッタは自ら涙を拭いた。

「これは神の奇跡が凝縮された弾丸だ」
赤い小さな輝きを先端に宿した金色の弾丸を受け取るとアリエッタは、父親の両手を握りなが言った。

「おとうさま…私は誇り高き貴方の娘です。どうか見守ってください」
父親は満足げに頷くと右手を離した。

…ありがとう。

娘は悲しげに俯くと左手を離した。

…さようなら。

パチリ!と目を覚まし、幽幻の濃霧から帰還したアリエッタは凄まじいスピードでホルスターからヘルシングの銃を抜き取り、機構と照準に狂いがないか確かめていく。
そして赤く輝く弾丸をこめると、傍らに倒れる霧丸に言った。

「先生…私、征ってきます」

活動限界をとうに過ぎ、人形になった霧丸の身体を抱きしめた後、アリエッタは暗い闇へと滑り込んでいく。
動くことは適わなかったが、霧丸はその精神の奥底でなにもかも感じ取り、理解していた。

…さあ、雷と髑髏の軍隊に屠られた哀れな魂たちよ…汝らの欲する事を成しなさい…。

リリスの呪詛により、嬲り殺しにされた鍵十字の軍隊たちは死んだことも気づかずに復讐心に燃える鬼となり、アリエッタの父親は死を受け入れた魂となって娘とこの世界を救うために舞い戻ってきた事を。

そしてリリスが霧丸とアリエッタに一瞥もくれずに飛び去ったのは、無垢な魂たちとそれを統べる大いなる力の加護があった事を。
淡い輝きの中で様々な子供の姿に変わるその魂たちも、アリエッタとともに姿を消していた。

友よ…さらばだ。

アリエッタの無事と友の冥福を祈りに刻み込みながら、
霧丸は夜明けまで決して目覚めぬ深い眠りへと落ちていった。



2006年07月27日

BLOODY ROMANCE

使徒に匹敵する力を持つはじまりの女性の魂と、「神の奇跡」が凝縮された弾丸を放つ銃を持つ娘の魂が対峙する数刻前。

…みなごろしのうたよ。

リリスの宣言とともに、城内は瞬く間に肉塊の浮かぶ血の海と化し、阿鼻叫喚は荒れ狂う赤い海に吹き荒れる嵐となり、アリエッタの耳目を襲った。
堅く閉じ、きつく塞いでも殺到してくるその恐怖の彩りと旋律は、精神の壁を破壊していく。

やがて殺戮の嵐は過ぎ去り、首を捩じ切られながらも死ぬことすら適わない連隊長の囀る不気味な唄だけが微かに洩れ聞こえてくる。

リリスは霧丸とアリエッタの潜む階上を見遣ると、片翼を広げて一気に跳躍した。

アリエッタは左の人差し指を噛んで、恐怖の齎す絶叫と精神の崩壊を耐え忍んだ。

しにたくない!
アリエッタは生まれて初めて死の恐怖に直面していた。
嘗てこの地を略奪しようとした闇の眷属たちとの戦いでは父が、霧丸が、そしてカーマインが守ってくれた。
だが、父は死に霧丸は倒れ、カーマインの魂は暗い闇に押し込められている。

アリエッタ…否、この地の全ての人々の魂を啜るべく、白い翼が空気を切り裂いて竜巻を生んだ。
激しい渦に晒されながら娘は父を何度も、何度も心の中で呼んだ。

おとうさま…おとうさま!

やがて轟音が城を震わせ、砕かれた彼女の心は闇の奥底へと舞い落ちて消えていった。

2006年07月25日

BLOODY ROMANCE

カーマインと霧丸が愛した村々は瓦礫の山と化し、赤黒い炎がその無残な風景を闇に焼き付けていた。
子供が積み木を崩して遊ぶように、爛々と眼を輝かせながらリリスは無邪気に破壊を楽しみ、その喜びが口元に薄く笑みを浮びあがらせる。

大地が揺れて全てを壊し、炎が燃えて全てを焼いていく。
その度に地下深く潜む肉体を持った魂たちが怯えて震えているのが愉快でたまらなかった。

もうすぐよ…果実をもぎ取るように優しく、屠殺するように一瞬だからそんなに苦しまないわ。
神罰を免れ、アララト山にたどり着いたノアの子孫ですら憎悪に溺れ、殺戮に明け暮れて魂の劣化が著しい。

リリスの娘であるリリン達を産むための滋養。
リリスにとっては劣化を免れたこの地の領民の魂こそ、それに相応しい馳走なのだ。

跡形もなく吹き飛ばされた家畜小屋跡に二人ほどがやっと降りることが出来る幅のらせん状の階段が冷気漂う暗黒の底へと続いていた。

蟻の巣のように幾重にも張り巡らされ、地下へと至る道筋はやがて一つの巨大な回廊へとつながり、その先には巨大な鉄製の扉が淡い松明の明かりに揺らめいている。
しかし地下礼拝堂の扉を照らしているのはその炎だけではなかった。

全身を青白い炎につつまれたリリスがそこにいた。
背中の片翼が燃え落ちるのをそのままに、彼女は呟く。

「貴女からはエリクシールの匂いがするわ。なぜ撃たなかったのかしら?」

荒ぶる息を整えながら娘が一人、青い炎の影を回廊に落とした。
「…この銃を受け継ぐ一族は、獲物を背後からは撃たないわ」

そう応えた娘の顔は泥と血に塗れて汚れ、革靴もシャツもスカートもボロボロに破れて素肌を晒している。
ただひとつ、黒い銃だけが精彩を放っていた。

しかし、振り返ってその眼をみたリリスは目覚めてから初めて礼節をもった声音で尋ねた。
「気高い娘よ。お名前は?」

全ての感情を超越した真摯の光をその眼に宿しながら、彼女は名乗った。

「アリエッタ…」と。

2006年07月17日

BLOODY ROMANCE

 右の人指し指を下唇に当て、首をかしげながらリリスは言った。
「でも何かが足りないわ」
 突如、大地が揺れて石畳を砕いて現れたサラマンダーの灼熱と輝きが闇を支配し、雨滴は忽ち蒸気となって散り、形あるものを焼き尽していく。
「まずは…炎」
 さあ…雷とドクロの軍隊に屠られた憐れな魂達よ…汝らの欲する事を為しなさい。
 パチンと鳴る指の音に応え、うごめき始める国防軍兵士だった骸たち。
 撲殺された者は脳髄をしたたらせ、刺殺された者は臓腑を引きずり、銃殺された者は肉に食い込んだ弾丸を溢しながら、白眼を剥いたまま起き上がって来る。
「次は…恐怖」
 骸たちの眼に瞳孔の開ききった鈍い輝きが宿った時、世界で最も勇敢な軍隊の中の軍隊を自負していた精鋭の自我は完全に崩壊し、今や雑多な音色の叫びをあげる肉袋に過ぎなかった。
「うふふっ…地獄に相応しい旋律だわ」
 生きながら骨を肉を血を自らの罪の結果にすすわれ、食われ、飲み干される様を歌劇を観るように堪能した後、リリスは地下に潜む濃密な魂達の息吹に喉を鳴らす。
 柑橘類の香りを楽しむような表情を浮かべて彼女は囁いた。
「地上はリリンのものになるのよ…」と。

2006年07月15日

BLOODY ROMANCE

獣の数字が刻印された右目には、雨に打たれながら呆然と立ち尽くす悪鬼のごとき人間共と血、膓を巻き散らし怨念漂う骸が写る。

不気味な旋律を歌い続ける連隊長の生首を掲げ、玩具を自慢する子供の様にリリスは微笑んだ。

攻城戦は完全に失敗したのだとSS達は痛感したが、重火器は反撃の狼煙を上げる事はなく、その銃口は濡れた地面を指し示すことしか出来なかった。

数刻前、カーマインと呼ばれていた列福の不死者の怒りに部隊は殺意を持ってあらがった。
しかし、リリスの無垢な笑みに彼等は悟ったのだ。

そのような抵抗などリリスの楽しみに華を添えるだけであると。

SS達は様々な種類の人間達をいたぶり殺してきたが、それでも相手が人間であるとの認識はあった。
だからこそ精神的な苦痛を与えて楽しんでいたのだ。

だが、リリスにとって人間などは虫けらと変わりなき存在にしか過ぎなかった。
虫達の羽を毟り、脚をもいで遊び、その苦痛を理解できぬ童のごとき無邪気な笑みが絶望を運ぶ。

「まさに地獄ね」

新しい遊びに古い玩具は必要ない。
投げ捨てられた生首は石畳に打ちつけられ、頭蓋の砕ける音が歌の終と黙示の始を告げようとしていた。

2006年06月17日

BLOODY ROMANCE

つい先ほどまで、カーマインと呼ばれていた紅蓮の炎の輝きを持つ意思は、リリスという蒼い氷雨によって見る影も無く打ち消されようとしていた。

・・・華奢な身体ね・・・。

 その身体の右眼に巣くって500年余。
生贄になるはずだった無垢な魂は聖痕の力を得て逆にリリスは左眼の奥に押し込められ、カーマインの強靭な精神力によって只の小さな悪意となって漂うほかなかった。
 退屈な時を払拭するかのように残された手の指をミスリルで覆われた肩口から胸にかけて、優雅に滑らせていく。

 金色の瞳と獣の刻印を輝かせ、呆けた表情でこちらを見ている二本足の雄に赤毛を弄りながらゆっくりと歩み寄った。
片翼の翼から豊かな白羽根を撒き散らせ、連隊長の顎をやさしく撫でながら耳元で囁く。

「ねえ・・・最高の快楽を貴方に味合わせてあげましょうか?」

 先程までとは全く異なる口調のその甘美な囁きと香りを連隊長は租借し、男性がいきり立つのを抑えることが出来なかった。
微笑む赤毛の女を嘗め回すように空虚な瞳が小刻みに動いている。

 リリスの指は連隊長の顔をゆっくりと這いずり、それを見つめる生き残った104名の部下達の興奮の動悸が空気を震わせ、羨望の吐息がそれに妖しい色をつける。
連隊長の眉間にその人指し指はぴたりと止まり、やがてずぶり・・・と、だらしのない音を立てながらゆっくりと刺し込まれ、赤黒い血がみるみるうちに溢れ出して細い指を汚す。
 彼は恍惚の表情のままゆっくりと眼を開け、にごった両の瞳が前頭葉を崩す指を見つめ、弛緩した口元からは涎が床まで零れ落ち、全く調の合わない鼻歌を大広間に響き渡らせた。
びくりびくりと全身を痙攣させ、快楽に浸されながら歌う不気味なその曲は自らの鎮魂歌となっていることすら、もう理解できはしない。

・・・こやつらの魂ではリリンを産みだす事はできないわ…。

 みるみるうちに恐怖に怯える餌にすらならない104の影を振り返り、微笑みながらリリスは言った。

「ふふっ…聞こえるでしょう?」

・・・皆殺しの歌よ・・・と。


2006年06月12日

BLOODY ROMANCE

アリエッタの瑞々しい若さが溢れている筈の顔面は今や蒼白になり、唇は震えて乾き、衝撃のあまり言葉を失った。
降りしきる羽根を見つめ、霧丸は途絶え行く意識をどうにか手繰り寄せ、眼下の光景に心を砕かれて動けない彼女に囁く。

「・・・あれは・・・カーマインではない・・・」

 ぼんやりと霞む脳裏にその掠れた言葉が染み込むのに一呼吸が必要であった。
アリエッタはその合間にふわりと漂ってきた羽根を手のひらで受け止める。

 それは…白い梟の羽根…。

 荒野の獣はジャッカルに出会い 山羊の魔神はその友を呼び 夜の魔女は、そこに休息を求め 休む所を見つける。(イザヤ書第34章14節より)

 神が「はじまりの男」の為に彼の肋骨から「従順な伴侶」を作り出す以前の最初の妻。
夜を支配する鳥である梟を象徴とし、後に天界から追われた天使長ルシファーの妻となり、アダムとエヴァの子孫の血を啜る、不死者の祖・・・。

 一方、背後の森で待機していた衛生兵達は、星空を掻き分けて突如湧き出した暗雲に、怯えて震えている。
司教の術で、化け物となったマウスまで城内に突入し、戦いはこちら側の一方的な勝利としか考えられなかった。
 もしも、あれを打ち倒せるものがいるとするならば、やはりそいつも化け物であろう。

「おい見ろよ・・・」

 汚れた下着とズボンを木の枝にかけ、灰色にくすんだシャツで下半身を覆った衛生兵は、黒い闇と深緑の大地の境に浮かんで大きくなってくる
白い人影を見つけた。
 先ほどはこちらに一瞥もくれず通り過ぎていった司教様が、別人のような崩れた表情でこちらに走ってくる。
白い法衣は走りにくいのであろう。何度も躓き、転びそうになりながらも何者かにに突き上げられるように、その速度は衰えることはなかった。
 やがて、彼は行きと同じように帰りも、衛生兵達を全く無視してそのそばを走りぬけていった。
ただ一つ異なっていたのは、おぞましい程の恐怖の伝播であった。
 衛生兵達も、最初からここに留まる勇気など持ち合わせてはいなかったし、忠誠心など恐怖に慄く心の鼓動が砕きわってしまった。
兵士達は銃を捨て、衛生兵は羞恥心と共に下半身に纏わりついていたシャツを投げ捨て、やがて甥っ子の宝物になるライカはしっかりと握ったまま、現世に向けて森を抜け出るべく必死に走った。
 司教は老体に鞭打ち、ぜえぜえと息を切らせながらもぶつぶつと呟きながら足をばたつかせる。
殆どは聞き取れず、意味のない呟きであったが、その中に恐怖を飲み込み膨れ上がった太く、濃密な単語があった。

 それは・・・「リリス」

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