めっちゃ高い自転車で京都市内をうろうろしたいなあ

2006年07月30日

BLOODY ROMANCE

どれくらいの時間が過ぎ去ったのであろう。
白く塗込められた世界の中で、アリエッタは自分の存在を確かめるように頬を撫で、両の掌を見つめた。
ここは天国なのだろうか?
それとももっと恐ろしい違う場所なのだろうか?
濃霧に遮られた視界の中に、命の色彩を見つけようと怯えた目が動く。

「アリエッタ…」

霞みが晴れぬ意識ではあったが、その声音の温もりを忘れる筈がなかった。

「…おとうさま」

濃霧の中から現れた痩身の男の柔和な表情が、娘の涙声に応えた。
父親は疲れた栗色の髪を節くれだった大きな手で、美しい艶を取り戻すように優しく撫で、娘は少し俯いてその気持ちを汲み取っていく。
アリエッタの背中のホルスターに納められた黒い銃を見つめながら、彼は言った。

「その銃は私のものだ」

やがて父親の手はアリエッタの肩に置かれ、その指先に強い意志を受け継がせるように力が込められていた。

「だが、これからはお前のものだ」

アリエッタの双眸から涙が溢れ、父親に抱きついてすがった。

「いや!おとうさま!逝かないで!」

父親もまた娘を強く抱きしめ、惜別を嘆いた。
しかしそれを振りほどくように、娘の両肩をつかんで身体を離す。

「アリエッタ。暗い闇の渕から領主様をお救いし、領民を守るのだ」
「無理です!私にはまだ無理です…」

白い霧の中へ落ちては消える涙の雫を優しく拭い、絶対的な殺戮者との対峙を恐れる娘を諭した。

「アリエッタ…よくお聞き。私とてお前や妻、仲間と別れるのは寂しく、辛い」
娘の頬を父親はゆっくりと撫でていく。
「だが、私はお前を遺せた。生きるとは何かを残していく事だ。お前を授けてくれた神に感謝し、生んでくれた妻に感謝し、そして…」
穏やかに語る父の顔を娘は涙にくれながら、じっと見つめた。

「なによりも健やかに育ってくれたお前に感謝している」
最後の嗚咽を振り絞り、アリエッタは自ら涙を拭いた。

「これは神の奇跡が凝縮された弾丸だ」
赤い小さな輝きを先端に宿した金色の弾丸を受け取るとアリエッタは、父親の両手を握りなが言った。

「おとうさま…私は誇り高き貴方の娘です。どうか見守ってください」
父親は満足げに頷くと右手を離した。

…ありがとう。

娘は悲しげに俯くと左手を離した。

…さようなら。

パチリ!と目を覚まし、幽幻の濃霧から帰還したアリエッタは凄まじいスピードでホルスターからヘルシングの銃を抜き取り、機構と照準に狂いがないか確かめていく。
そして赤く輝く弾丸をこめると、傍らに倒れる霧丸に言った。

「先生…私、征ってきます」

活動限界をとうに過ぎ、人形になった霧丸の身体を抱きしめた後、アリエッタは暗い闇へと滑り込んでいく。
動くことは適わなかったが、霧丸はその精神の奥底でなにもかも感じ取り、理解していた。

…さあ、雷と髑髏の軍隊に屠られた哀れな魂たちよ…汝らの欲する事を成しなさい…。

リリスの呪詛により、嬲り殺しにされた鍵十字の軍隊たちは死んだことも気づかずに復讐心に燃える鬼となり、アリエッタの父親は死を受け入れた魂となって娘とこの世界を救うために舞い戻ってきた事を。

そしてリリスが霧丸とアリエッタに一瞥もくれずに飛び去ったのは、無垢な魂たちとそれを統べる大いなる力の加護があった事を。
淡い輝きの中で様々な子供の姿に変わるその魂たちも、アリエッタとともに姿を消していた。

友よ…さらばだ。

アリエッタの無事と友の冥福を祈りに刻み込みながら、
霧丸は夜明けまで決して目覚めぬ深い眠りへと落ちていった。



この記事へのコメント
はぅぅぅ〜、お父様ぁぁ(TOT)
アリエッタ、頑張れ!!
頑張って、リリスの暴走を止めるんだ!!!
ところで、霧ちゃんはどないなってしまうんでしょう??

さてさて、師匠も夜霧さんもいいペースで更新なさってますので、オイラもこのペースで更新できるように頑張りますw
っつうことで、更新しましたのでヨロシクです♪
Posted by sunafkin at 2006年08月01日 00:16
素晴らしい!素晴らしい文章です!!
ああ、今感じているこの感動を誰と分かちましょうか!?
誰か聞いてくれ!!自分は今、めっさ感動している!!
アリエッタ頑張れ!!頑張れ!!
そしてカーマイン様カンバーック!!
Posted by 夜霧 at 2006年08月01日 12:40
いつもありがとうございます。
携帯がどうも妄想投稿wには使いづらいのでパソで書いております。
おとうさま話…気に入っていただけたようでなによりです。

アリエッタとリリスの対峙…うまく書けるかなあ☆
京鬼クンや緋色の更新が小生の原動力であります。またお知らせお待ちしておりますね!
Posted by hirotako→夜霧少佐☆スナ殿 at 2006年08月03日 23:28
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。