めっちゃ高い自転車で京都市内をうろうろしたいなあ

2006年06月12日

BLOODY ROMANCE

アリエッタの瑞々しい若さが溢れている筈の顔面は今や蒼白になり、唇は震えて乾き、衝撃のあまり言葉を失った。
降りしきる羽根を見つめ、霧丸は途絶え行く意識をどうにか手繰り寄せ、眼下の光景に心を砕かれて動けない彼女に囁く。

「・・・あれは・・・カーマインではない・・・」

 ぼんやりと霞む脳裏にその掠れた言葉が染み込むのに一呼吸が必要であった。
アリエッタはその合間にふわりと漂ってきた羽根を手のひらで受け止める。

 それは…白い梟の羽根…。

 荒野の獣はジャッカルに出会い 山羊の魔神はその友を呼び 夜の魔女は、そこに休息を求め 休む所を見つける。(イザヤ書第34章14節より)

 神が「はじまりの男」の為に彼の肋骨から「従順な伴侶」を作り出す以前の最初の妻。
夜を支配する鳥である梟を象徴とし、後に天界から追われた天使長ルシファーの妻となり、アダムとエヴァの子孫の血を啜る、不死者の祖・・・。

 一方、背後の森で待機していた衛生兵達は、星空を掻き分けて突如湧き出した暗雲に、怯えて震えている。
司教の術で、化け物となったマウスまで城内に突入し、戦いはこちら側の一方的な勝利としか考えられなかった。
 もしも、あれを打ち倒せるものがいるとするならば、やはりそいつも化け物であろう。

「おい見ろよ・・・」

 汚れた下着とズボンを木の枝にかけ、灰色にくすんだシャツで下半身を覆った衛生兵は、黒い闇と深緑の大地の境に浮かんで大きくなってくる
白い人影を見つけた。
 先ほどはこちらに一瞥もくれず通り過ぎていった司教様が、別人のような崩れた表情でこちらに走ってくる。
白い法衣は走りにくいのであろう。何度も躓き、転びそうになりながらも何者かにに突き上げられるように、その速度は衰えることはなかった。
 やがて、彼は行きと同じように帰りも、衛生兵達を全く無視してそのそばを走りぬけていった。
ただ一つ異なっていたのは、おぞましい程の恐怖の伝播であった。
 衛生兵達も、最初からここに留まる勇気など持ち合わせてはいなかったし、忠誠心など恐怖に慄く心の鼓動が砕きわってしまった。
兵士達は銃を捨て、衛生兵は羞恥心と共に下半身に纏わりついていたシャツを投げ捨て、やがて甥っ子の宝物になるライカはしっかりと握ったまま、現世に向けて森を抜け出るべく必死に走った。
 司教は老体に鞭打ち、ぜえぜえと息を切らせながらもぶつぶつと呟きながら足をばたつかせる。
殆どは聞き取れず、意味のない呟きであったが、その中に恐怖を飲み込み膨れ上がった太く、濃密な単語があった。

 それは・・・「リリス」
この記事へのコメント
すごい!ついにリリスまで!!
圧倒的な筆力に陶然とします。
ああ続きが待ちきれない!
Posted by 夜霧 at 2006年06月12日 21:55
おぉ〜、よくは分からないが凄いっつうのは分かりました^^;
あ、ルシファーやらアダムやらリリスは知ってますよw
やっぱり、本腰入れて西洋オカルトも手を出してみるかな。

さてさて、京鬼を更新しましたw
Posted by sunafkin at 2006年06月15日 00:46
いつもコメントありがとうございます。
大変有難いです。
このお話もそろそろ御仕舞いに向けてラストスパートであります。
2月から始まって気が付けば梅雨ですわ。
更新が遅れているのはお話が纏まっていないから…えへへっ!
どうか今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by hirotako→夜霧少佐☆スナ殿 at 2006年06月20日 00:21
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