めっちゃ高い自転車で京都市内をうろうろしたいなあ

2006年08月10日

BLOODY ROMANCE

アリエッタが西の空に立ち上った炎に向けて疾走している頃、リリスは地下礼拝堂へと続く螺旋階段をゆっくりと降りていた。

地下深く潜んでいるにも関わらず伝わってくる破壊と殺戮の衝撃と衝動に怯えながらも、領民達の心から諦めのため息が洩れることはなかった。
信念と希望の色濃い生命の香りが、一層リリスの食欲をそそる。

生を慈しみ、死を悼む。
獣と人の違いはそれが出来るか否かにある。
先ほど血の海に溺れさせた者どもは紛れもなく人の形をした獣であった。
万物の霊長の呼び名に値しない存在であり、リリスにとってその魂は悪臭を放つ腐った果実に過ぎない。

もうすぐよ…果実をもぎ取るように優しく、屠殺するように一瞬だからそんなに苦しまないわ。

飢餓を制する喜びに溢れた横顔を松明が照らし、巨大な回廊の果てにそれに相応しい鉄の扉が淡く輝いて見える。

しかし、リリスは立ち止まっていた。
その形を取り戻しつつある切り落とされた筈の左手を見つめていた。

幼い女の子が無邪気な顔で走りよってくる。
小さな男の子が悪戯っぽく覗き込んでいる。
白い靄が立ち込めて、その中で遊ぶ数百人の子供達。

その向こうでゆっくりと立ち上がり始めた、女性の姿をした蒼い影。

リリスは懐かしい友人を迎えるように、微笑みながら挨拶をした。
「久しぶりね。地獄のお仲間は息災かしら」

神の炎の称号を持ち、太陽の統率者であり、人の魂を守護する地獄の支配者。
その業火は地獄の罪人を永久に焼き、恐怖と絶叫と苦しみをもって最後の審判に臨む大天使。

「…ウリエル」
そう呼ばれた蒼い影は左手を上げた。
リリスの左手に焼き付けられる刻印…それは…。
たちまち蒼白い炎につつまれたリリスは笑った。
「この娘は本当に哀れね。ミカエルの声を聞いたばかりにその身体を焼かれ、貴女の聖痕が打ち付けられたばかりに魂までも焼かれるなんて」
そして口角を上げて、無情の大天使を睨みつけて言った。

「さあ、最後の審判と黙示の始まりね。二人で世界に火を放つのも楽しそうだわ」

無邪気に遊ぶ子供達の魂が聖痕に吸い込まれるのを見つめながら、ウリエルは応えた。
「残念ながら貴様の相手は私ではない」

そして白い靄と蒼白い影は四散して消えていった。
だが、変わりに聞こえてくる確かな息吹。
蒼白い業火に身を委ねながら、背を向けてリリスは待った。

対峙に値するという人間の到着を。

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